連鎖する優しさ
伊東市立北中学校 3年 佐々木 心優

 「心の優しい子になるように。」
 私の名前には、そんな思いが込められています。「何て読むの?」と聞かれたり、間違えて呼ばれたりしてしまうことも多いけれど、両親からもらったこの名前を私はとても気に入っています。そして、この名前に誇りを持てるよう、優しくて思いやりのある人になろうと思っています。
 目標にしたのは、母です。みなさんのお母さんはどんなお母さんですか。私のお母さんは、とても優しくて笑顔の似合う自慢のお母さんです。そして私は、母のような優しさを持てる人になりたいと思っています。
 私の母は学校の先生をしています。私が幼い頃は今よりもっと長い時間家にいましたが、最近は夜遅くまで仕事です。疲れ果てて帰ってくる母を見るととても心配になります。それでも母は笑います。朝は早く起きて、十分後には朝食が用意されています。洗濯も皿洗いもして、私達の寝ついた後は一人で勉強もします。そして、どんなに忙しい中でもたくさんの愛情を注いで私達三きょうだいを育ててくれました。
 私は今年、受験生となりました。今までは自力で勉強していましたが、志望校に合格するためにこの夏から塾に通うことになりました。そのために、家族に協力してもらうことが増え、母はさらに大変になりました。
(それほどの価値が自分にあるだろうか。)
(もし結果がでなかったら?)
私はどんどん弱気になり、うしろめたい気持ちになりました。塾にはお金もかかります。姉や弟のために使えるお金が少なくなります。せめてもと思い、私はおこづかいを断りました。それでもテストでは結果が出ずひどく落ち込みました。追い討ちをかけるように姉が、
「私は塾に行かずに自力で合格した。」
と言います。このまま塾を続けて良いのか、両親の期待に応えられるだろうかと、頭の中で何度も反省会を開きました。そんな時、両親が私に、
「これはお前への投資だから、今は好きなことをやりなさい。」
と言いました。この言葉に、一気に肩が軽くなったように思います。その日から私は、私のできることで恩返しをしようと思うようになりました。お手伝いをしたり、学校であった楽しいことを話したり、作ってもらったご飯にはきちんと手を合わせ、毎日“おいしい“と言って食べます。そして、“ありがとう“を積極的に使うようにしました。すると、不思議と自分が感謝されることも増えました。そして、家で心がけていたことが自然と学校でもできるようになりました。学校での私は、生徒会本部としての責任を果たすことにばかり一生懸命でしたが、クラスメイトとして発表の時や体育祭練習の時に率先して声を出しました。特に意識しているのが、“笑顔“でいることです。笑顔でいると、周りを傷つけることも少なくなります。私の笑顔が誰かの笑顔につながっていたら良いなと思い、私は笑います。また、私は体が弱く、体調が悪い時の辛さはとてもよく分かります。だから、具合の悪い人には、相手の身になって接することを心がけてきました。どんな時でも、優しさと笑顔を忘れないようにしてきました。
 自分にできることをしていると、物事を良い方向に引っ張れるようになりました。すると余裕ができて、たくさんのことに”気づける”ようになりました。母の優しさのおかげで、私は頑張ることができ、学校でもそれらを発揮できるようになったのです。
 私は、人の優しさは誰かにもらった優しさから生まれるのだと思います。もし今、「苦手だな」と思う人がいれば、自分の優しさを分けてあげてください。きっと、お互いの良さが伝わると思います。みんなに優しくなるというのはすごく気を遣うので、とても大変なことです。私は神経質なので、「もっとああしていれば」と感じることが人より多く、今でも悩んでばかりです。しかし、誰かのための努力は、いつか自分に返ってきます。
 だから私は、後悔ばかり、反省ばかりの自分を克服し、名前に負けず、「心優しい人」を目指します。母のような、優しさと笑顔溢れる人に、一歩近付けた気がします。

お名前は何とお読みするのでしょう?評者もそう思ってしまいましたが、心優さんの、この名前に誇りを持ち、心優しい人になりたいという気持ちがとても伝わります。お母様からもらった優しさに感謝して、自分のできることを頑張る。この心優さんの心がけなら、きっと目指す人になれると思いますよ。