自分らしく
静岡市立清水小島小学校 6年 鈴木 このは

 私はいつもぼうしをかぶっています。お母さんが作ってくれた世界に一つだけのぼうしです。かぶっている理由は、病気で髪の毛が生えてこないからです。なんで私ばっかり、と何度も思ってきました。みんなの当たり前が私の当たり前じゃないことが、とても悔しかったです。友だちから、たまに向けられる同情の目がとてもきらいでした。
 この病気のせいで、このぼうしのせいで、何度もいやな思いや悲しい思いをしてきました。小さい子から聞かれる「なんでお姉ちゃんはぼうしをかぶっているの?」という純粋な質問が、私はとても怖かったのです。そして、どのように答えるのが最もいいのかわからなくて、困っていました。毎回聞かれるこの質問が、私は少しトラウマのようになっていました。そして、気がつけば小さい子ときょりをとっていました。心の中では本当にいやで怖いのに、無理してへらへらしている自分が一番いやでした。
 他にも男の子たちがふざけて「ぼうず」とか「はげ」とか言い合っていて、私に言っているわけではないとよくわかっているけど、悲しい気持ちになってしまいます。
 ある日、プールの授業がありました。授業の後、友だちが
「いいじゃんすぐかわいて。私、髪全然かわかないからうらやましいもん。」
と言ってきました。その子は、私に前向きな考えを話してくれただけでしたが、私はとても悲しくて、悔しかったです。また同情されているな、と感じました。そして同時にいら立ちました。「絶対うらやましくなんてないんでしょ?私はみんながうらやましいのに、何で私なの…。」と思いました。
 ある時、ふと思いました。「自分のこの病気は、そしてぼうしは、私に悪いえいきょうしか無いのかな」と。そのときから、このぼうしをかぶることで、いいことは何かを考え始めました。
 いいところ一つ目は、すぐ私のことを覚えてもらえることです。ぼうしをかぶっているので、印象に残りやすいんだと思います。色々な子から、「あっ、あのぼうしの子だぁ。」と話しかけてもらえます。世の中にはたくさんの人がいて、その中で、相手の記憶に自分が残るのはとてもうれしいことだと今は思っています。
 いいところ二つ目は、よく考えたらだれ一人同じ人はいないことに気づけたことです。顔、性格、はだの色など、ちがうところがあるのが当たり前で、ちがうからこそ面白いということに気づけました。だから、自分と他人を比べる必要はないと思い、ぼうしは私の一つの個性で、自分らしくいようと心に決めることができました。
 私には大切な友だちがいて、趣味もあって、好きなこと、好きなものもたくさんあります。これからもやりたいことをたくさん見つけて自分らしく過ごしていきたいです。どんな人も自分らしく過ごせることを願っています。人それぞれの「個性」をおたがいに認めあうことで、自分の好きではないところが好きになれると私は思います。

このはさんの思いがまっすぐ伝わってくる書きぶりに、読んでいてひきこまれました。自分を見つめ、自分と向き合うことで大きな気付きにたどりつく過程は、この作文を読む人みんなも励まされることでしょう。「自分らしく」というタイトルの力強さ、明るさが作文全体を通して光っています。