ぼくは、スーパースター
浜松市立上島小学校 5年 石津 大暉

 ぼくは、生まれたときから色白で、保育園の先生や近所の人からも
「真っ白で、女の子みたいだねぇ。」
と言われることが多かったです。そう言われることが、少しはずかしく、照れくさい気がしていました。男の子でありながらはだが色白できれいだと言われて戸まどうときもありました。
 そんなぼくの顔にい変が起き始めたのは、小学四年生のお正月ごろでした。口の周りの皮ふが少し白くなっていました。元々、色白なので、それほど目立つこともなく、ぼくも両親も気にしていませんでした。春先になり、口の周りから首にかけての皮ふがまだらに白くなり始めました。いつも明るい母は、
「これは、はたけかしらね。」
と、それほど深こくな表情をせずに言いました。
 小学五年生の六月、父がスマートフォンをかた手に
「マイケル・ジャクソンと同じ皮ふの病気じゃないのかな。」
と言いました。ぼくと母は、「まさか」という顔をして目と目を合わせました。
 父は、真けんな顔で皮ふがまだらに白くなる病気について、サイトを調べていました。その表情からあまり良い印象を受けなかったぼくのことを察して、笑顔で
「たいき、すげぇじゃん。父ちゃんの大好きなマイケル・ジャクソンと同じ皮ふの病気かもしれないぞ!世界のマイケルと同じだぞ!」
と言ってくれました。すぐに、マイケル・ジャクソンのライブ動画を検さくしてくれて、父のひざの上で観ました。
「スーパースターは、はだの色じゃないな。」
と父は、ぼくの頭の上にあごを乗せて言いました。ぼくは、
「うん、かっこいいね。」
と答えました。
 次の日、父と二人でかかりつけの皮ふ科に行きました。土曜日ということもあり、かなり混んでいました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、車の中で一時間以上待ちました。その間も、ずっとマイケル・ジャクソンのライブ動画を観ていました。正午近くになって、やっと順番が来ました。診察室に入って丸いいすに座りました。お医者さんが、じいっとぼくのほお、口の周り、首筋を注意深く見ていました。
「おそらく、じん常性白はんかと思います。有名なところでは、マイケル・ジャクソンさんや森光子さんと同じで、皮ふがまだらに白くなる病気です。」
父とぼくは目を合わせ、「やっぱりね」という顔をしました。
「ただ、うちでは治りょうができません。これといったぬり薬も、飲み薬もありません。紹介状を書きますから、駅南にある−。」
と別のクリニックを紹介されました。父は、ぐっとまゆをひそめて、
「治りますか。」
とだけ聞きました。お医者さんは明確に答えませんでした。
 帰りの車の中で父は、
「ほら、やっぱり父ちゃんの言った通りだっただろ。お前はスーパースターだ!!」
と笑顔で言いました。
 その夜、父は、「見た目問題」の写真てんのサイトを見せてくれました。それは過去にNPO法人マイフェイス・マイスタイルが主さいした写真てんでした。見た目にしょう状のある人たちの自分らしい生き方、楽しさが写真におさめられていました。顔にあざのある人、奇形の人、やけどなど様々な見た目に問題のある人たちの写真がありました。
 ぼくは見た目問題について、当事者として考えるようになりました。先天的やぼくみたいに後天的に見た目のしょう状を持つ人々が、その見た目が理由で、偏見や差別、対人関係などになやみ、不安をかかえている気持ちが少しだけ分かる気がしました。ぼくは、毎日マスクを外すのが不安です。人前でマスクを外したときに、心無いことを言われても、ぼくの個性だと思えるようになりたいです。そして、少なくとも家族からは、「スーパースター」だと思われているということをわすれずに生きていきたいです。
 見た目で、偏見や差別のない世の中になるといいなぁと強く思います。

自分の体のことを素直に受け止め、前向きにとらえていますね。大暉さんのこの「強さ」が読み手の心に強く響いてきます。お父さんとのやり取りも丁寧に描かれ、温かい家庭の情景が目に浮かんできます。お父さんのおっしゃるとおり「大暉さんこそスーパースターです。」