先生たちがいてくれるから
伊東市立八幡野小学校 5年 葛城 孔葉

 ぼくは、とても困っていることがあります。小学校に入学して、一年、二年、三年とずっと「書くこと」、「読むこと」、「発表すること」が、どうしてもできなかったのです。それともう一つ。たくさんの人がいる中で、先生の声や友達の声がとても聞きにくくて、気付きにくいのです。
 「書くこと」はひらがなのかたち、漢字は見るたびに違う感じに見えるし、読み仮名と漢字が別物に見えます。だから「読むこと」も難しいです。「発表すること」は、間違いだったら嫌だなという気持ちが大きくて、できませんでした。
 二年生のとき、計画帳を一学期の間ずっと書かないで、だまって隠していたこともありました。あとでばれたけど。とにかく、宿題が嫌で、やりたくなかったです。だから忘れ物が多くて学校に行っても「分からないな」と思うことが勉強以外にもたくさんありました。三年の一学期の面談で、あまりにも漢字ドリルの宿題をやりたがらないぼくのことを心配して、母は担任の先生に相談しました。先生は「通級がいいかもしれない」と保健福祉センターを紹介してくれました。そこには女の先生がいて、ブロックを使って紙に書いてある図形を作ったり、色に合わせて紙を分けるようなテストをしたりしました。緊張してドキドキしていたけれど、とても優しく接してくれて安心しました。
 そして、ぼくの苦手なことがはっきりしました。「文字の形をとらえることが苦手だから、文章を読むことと、書くこと」、「たくさんの人がいる中で、声を聞き分けること」の二つです。これを聞いた時、「そうなの!やっと分かってもらえた!」と思ってうれしくなりました。
 三年生の二学期から月に一回、ぼくが通っている小学校からは車で三十分ほどのところにある学校へ、通級が始まりました。そこには二人の先生がいて、どうやったら分りやすいか、ぼくにとってやりやすい方法をいっしょに考えてくれました。
 通級で一番できるようになったと思うことは、人とのコミュニケーションです。分からないことは、分からないと言ってもいいことが分かって、自分の意見も言えるようになって、まだ緊張するけれど発表もできるようになりました。通級のクラスに行けば分からないことが解決できるから、学校にも行きやすくなりました。
 漢字テストは0点続きだったのに、一回で合格できるようになりました。それは漢字の書き取りをみんなが一マスに一文字書くところを、ぼくは四マスに一文字を大きく書いて練習したら、新しい漢字を覚えやすくなったからです。
 担任の先生は、ぼくができた分、丸をつけてくれたり、ほめてくれたりしたから、やる気もどんどん出て、もっとできるようになりたいと思いました。
 四年生になって、担任の先生が替わりました。その先生も同じやり方をしてくれました。ぼくが分からなそうなときは、机まで来てくれて優しく教えてくれました。宿題を最後までできなかったときは「明日出してね」といってくれて本当にありがたいなと思いました。
 ある日友達から「おまえだけ特別扱いかよ。ずるい」と言われました。でも、「ぼくは分からないからそうしているだけだよ。キミも分からないなら先生に相談しなよ」と言えました。
 五年生になるとき、新しい担任の先生は分かってくれるかなと不安になっていました。急にいろいろ難しくなり、分からないなと思うことが増えました。でも、担任の先生は、「これはやらなくていいから、こちらを先にやってみよう」と優しい言葉でとても分りやすく説明をしてくれます。分からないことが少なくなると、気持ちがとても明るいです。
 ぼくは今でも「書くこと」、「読むこと」、「発表すること」が苦手です。この作文も、ぼくが思っていることを、母が紙に書いて、パソコンで清書をしてくれて、プリントした物を見ながら写しています。
 ぼくはとても先生たちに感謝しています。よい先生に出会えて、自分はラッキーだなと思います。先生たちにたくさん助けてもらったから、友達やクラスの役に立てるように頑張りたいと思っています。

「文字の形をとらえること」といった、自分の苦手なことを、周りの方の協力を得ながら前向きに乗り越えようとする姿に、勇気づけられます。また、苦手なことを抱えている人に、どのように接すればよいか、考えさせられる作品です。孔葉さんの体験を多くの人に知ってほしいと思います。