第2119号2022年4月10日
平和のためになすべきこと

静岡県教職員組合
中央執行委員長

赤池浩章

ウクライナにおけるロシアの軍事侵攻では、人々は避難生活を余儀なくされ、多くの子どもたちも犠牲になっています。避難民の状況を伝えるテレビ報道の中で、一人の子どもが生まれた様子が報じられていました。ウクライナでは、18歳から60歳までの男性の国外退去が認められていないため、父親は生まれた我が子を見ることも抱くこともできません。母親は、我が子が生まれた喜びよりも夫の命や子どもの将来に対する不安の方が大きく、ただただ泣いていました。今はただ、その子どもが父親に会える日が来ること、そして“生まれてきてよかった”と思える人生を送ることを願うのみです。

今起きている現実は決して“他人事”ではありません。権力者の暴走として事態の収束を待てば済む問題ではないと考えます。先進国の多くが‘国際協調’や‘共存共栄’の重要性を唱えながら、一方で‘国際的競争力’を高めることを目的として‘自国第一主義’の政治をすすめています。ロシアという大国が武力行使という許されざる暴挙に至ったことにより、世界中が大混乱に陥っていますが、貧困・格差に端を発する暴力や紛争は、地球上で絶えることなく続いています。今、罪もない人々の命が奪われている現実は、けっしてウクライナの人々だけを襲っている脅威ではなく、人類に向けられた凶器であり、私たち一人一人の意思と行動が問われていると感じます。

世界は20世紀に多くの尊い命と財産を失い、戦争がいかに愚かな行為であるかに気付かされました。そして、国連をはじめ経済・保健・環境など様々な国際機関を整えるとともに、多くの国では民主主義社会の実現をめざしてきました。そのために公教育は重要な役割を求められ、私たち教職員は、社会や子どもたちをとりまく様々な課題と向き合いながら、日々の教育活動に尽力しています。第二次世界大戦が終わって75年余が過ぎましたが、教育に与えられた命題は未だ道半ばであるといえます。私は、「静教組運動を次の世代につないでいくことが、平和・人権・環境・共生が尊重される社会の実現につながる」と信じ、組合員の皆さんとともに、一つ一つの課題に向き合っていきます。