キープトライングで得たもの
湖西市立新居中学校 3年 河邊 翔太郎
二年生の二月、僕は一か月間何かを続けてみること(キープトライングと僕が名付けたもの)をやってみようと決意した。それまでは将来使わなかったり進学に関係がなかったりする事に時間やお金を使うのはもったいないと思っていた。例えば、関係のない人とは極力会話をさけたり、服はほとんど毎日同じ物を着ていたりした。
そんな僕がキープトライングをやってみようと思ったきっかけは、僕の好きなロシア人の卓球選手が、「僕は生まれつき才能がある人よりも、くだらないことでも続けられる人の方が尊敬できる。」と言っていたからだ。その言葉をネットで見て、一つのことを続ける力が僕にはまだないなぁと思ったからだ。
そこで、僕はこのキープトライングを実際に行って、積極的な心をもつことを目標にした。目標を達成するために登下校時に挨拶を積極的にしたり、困っている人がいたら助けたりした。簡単なことだと思っていたが、続けるとなると意外につらい。なぜなら、成果がすぐには出ないからだ。これはどんなことにも当てはまるのではないだろうか。
しかし、数日間続けていると変化があった。それまでは、こちらから挨拶をしていた相手が、相手の方から挨拶をしてくれたり、話しかけてくれたりしたのだ。ただ、人とのコミュニケーションに関わることでどうしても勇気が出せず、僕にできないことがある。それは、電車やバスなどで座れていない高齢の方や妊婦さんに席を譲るという行動だ。それは次のような場面に出会ったからだ。
ある日、電車に二人組で乗っている高齢の方がいた。そのうちの一人は座り、一人が座れずにいたのだ。僕は譲ろうと思いつつもなかなか動けなかった。そのとき、僕の斜め前に座っていた女子高校生の方が席を譲ろうと声をかけていた。しかし、その高齢の方も恥ずかしかったのか、「大丈夫ですよ。まだ、そんな歳じゃないですから。」と断っていた。その女子高校生の方は勇気を振り絞って声をかけたのだと思うが、後にはきまり悪そうに一人分あいたままのシートが残されていた。確かにけげんそうな表情で断られるよりは良かっただろう。しかし、その高齢の方が言葉を受け入れて座っていたら、周りの多くの人もほっこりして気持ちのいい風景が広がっていたのではないだろうか。
僕はこのキープトライングを実行した一か月間で、二つのことを学んだ。
一つ目は、挨拶を続けることで学んだ、面倒くさくても恥ずかしくても何かを続けることで、小さくても何か幸せが生まれるということだ。これは部活動や勉強においても当てはまると思う。実際に、部活動で県の強化指定選手を選考する試合で経験することができた。僕はそこで選ばれるためにクラブチームの練習に積極的に参加したり、部活動の休み時間でもコツコツと練習を重ねたりした。それが功を奏し、試合の本番でも力を発揮し、強化指定選手になることができたのだ。このように毎日積み重ねることが幸せを手に入れる近道なのではないかと思う。
二つ目は、電車での出来事から学んだ、相手が自分のためにしてくれたことを素直に受け入れることが大切ということだ。僕は、誰かが自分のためにしてくれた努力や親切を無駄にしたくない。
この一か月間で、僕は二つの大切なことを学んだ。二つ目の出来事は自分から起こしたアクションではないが、前述のような考え方をすることが出来たのは、キープトライングを続けていたからだと思う。僕は今もこの活動を続けている。
「努力を続ける」
これが何よりも大切だと思う。
「キープトライング」、多くの人の役に立つものではないだろうか。
評
キープトライングというネーミングセンス、そしてそれを継続し続ける行動力。実際に行動したからこそ見えた世界、発見が生き生きと語られているところが、河邊さんの作品の魅力です。その行動力と視野の広さ、気配りは、これからも河邊さんの生活をさらに豊かに、幸せにしていくことでしょう。