赤と青
静岡市立清水有度第二小学校 6年 望月 あかり

 私には最近悩んでいることがあった。
 それは、姉にいらだちをぶつけてしまうこと。姉は成績が良い、絵がうまい、友達がたくさんいる、けじめがきちんとついていてなんでも要領よくこなせる・・・もっともっとすごいところがたくさんあるそんな姉が、とてもうらやましかった。三歳年上だから、私よりも出来ることが多くて当たり前だと母は言うけれど、目の前で姉が輝いている姿を見ていると、頑張っても追いつけない自分がなぜかけなされているように感じてしまう。そう感じてしまう自分も嫌になっていた。
 ある日の朝も、学校へ行く前にそんな気持ちで私の心の中はいっぱいだった。理由は、姉の身支度が早いということ。前日、塾や学校の課題をこなしていて就寝時間が遅かったにも関わらず、さっと起きてすぐに支度をして時間通りに出かけて行った。私はというと、眠さに負けて遅くなり、出発時間が過ぎていた。他の人が聞いたら笑ってしまうようなささいな出来事だけど、私にとっては嫌なことだった。
 その日は学校に行っても気持ちは沈んだままで、大好きな図工も手が重く感じて筆が動きそうになかった。それだけでもうんざりしていたところに、使おうとしていたむらさきの絵の具もなくなってしまった。仕方なく、赤色と青色の絵の具を混ぜることにした。赤と青。真反対とも言える全然違う色だけど、混ぜるとむらさきという新しい色が生まれる。私達姉妹の名前は、この「あか」と「あお」が関係している。真っ先に私と姉のことを思い浮かべた。
 姉に出来て私に出来ないことがたくさんある分、私に出来て姉に出来ないこともきっとあるはずだ。それらを比べずに、お互いに足りないところや欠けているところを補いあえば、素晴らしい物ができるはずだ。いつもモヤモヤしていた気持ちから、「むらさき」も良いかな、と思えた瞬間だった。
 また、単色としてもきれいな赤色を見ていて、いつでも明るく、個性を活かしていきたいとも思った。私の名前には、みんなを明るく照らしてくれるような明るい子になってほしいという願いが込められている。両親がつけてくれた大切な名前だから、その願いや思いに応えたい。そして、自分だけでなく、応援してくれる周りの人も笑顔にしたい。
 私は今、アルトサックスを頑張っている。姉の吹奏楽のステージを見て、自分の好きな曲を楽器で吹いてみたいと思ったことが始まりだ。それまでの私だったら、姉と同じフルートを選んでいたと思う。色々な楽器の中からアルトサックスを選んだ理由は、大好きな曲のメインがサックスだったことや、姉とは違うものに挑戦してみたかったからだ。アルトサックスとフルートは、音色や与えてくれる印象が全然違う。でも、この二つの楽器の音色が合わされば、新たに美しい音が生み出される。それに加えて、お互いに切磋琢磨することもできる。もう少し上手に吹くことができるようになったら、近い将来、姉とふたりで演奏することが夢である。しかし、練習は一進一退で、途中であきらめそうになることも多々あった。そんなことがあってもサックスを続けているのは、いつか姉とふたりで演奏して、楽しみにしてくれている家族や応援してくれる友達を笑顔にしたいからだ。今は、「自分のペースで進歩できれば良い」と思うことができ、自分に自信を持って取り組めている。まだ発展途上の私であるが、これからもオリジナルの私を好きだと言えるような人になりたい。

自分を誰かと比べてしまう。そんな身近なところにある悩みを切り口に、自分の心の中を見つめ、向き合う姿がよく表現されています。解決のきっかけを見出した絵の具のエピソードに心をうたれました。見つけた夢に向かい歩み続けていくことを願っています。