第2089号2020年1月10日
“誰一人取り残さない” 社会を創るために

静岡県教職員組合
中央執行委員長

赤池浩章

近年、社会の様々な分野において「持続可能性」というキーワードが用いられています。「持続可能」という言葉自体は新語でも造語でもないのですが、2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたことにより、国際的な“流行語”になったと感じています。日本においても数年前から行政や大企業を中心に、基本理念や行動目標等に「持続可能」という言葉が用いられるようになりましたが、昨年あたりから遭遇する機会が増えた感があります。テレビで「SDGsキャンペーン」関連の番組をご覧になった方や、街のディスプレイでSDGsの“ロゴ”がデザインされたポスターに気づいた方も多いことと思います。

ところで、持続可能な開発目標(SDGs)の前身に「ミレニアム開発目標」(MDGs)があったことをご存知でしょうか。MDGsは2000年に国連サミットで採択された国際目標ですが、私自身は2008年頃、つまり国連の採択から8年が経過してようやく知った次第です。MDGsは、極度の貧困と飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げたものですが、日本ではそれほど大きく取り上げられませんでした。2008年と言えば“リーマンショック”が起きた年であり、21世紀を迎えてからの当時の経済動向から推察すれば、「MDGsどころではなかった」のかもしれません。しかし、自国の利益や自社の成長のみを優先する新自由主義的な政治・経済は「持続可能性」を伴わず、結果的に“リーマンショック”を招いたと言っても過言ではないと考えます。MDGsの後継策として「持続可能性」がキーワードとされたことは“必然”とも言えますが、世界の現状は目標に近づいているとは言えないと感じています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、日々の生活は一変しました。学校においても行事の見直しを余儀なくされたり、感染防止対策を講じながらの教育活動が求められたりするなど、緊張感の中での業務が続く毎日となっています。また、医療従事者や感染者等に関わる誹謗中傷、人権侵害など“有事”の中で陥りやすい人間の“負の側面”も社会問題となっています。教育はMDGsにおいてもSDGsにおいても目標の一つとされ、持続可能な社会の形成にとって極めて重要な役割を担っています。子どもたちにとって、この状況の中において経験したことや学んだことが、“誰一人取り残さない”社会を創る力となるよう、皆さんと共に諸課題に向き合いたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。