第2079号2020年8月10日
ゆたかな学びを支える事務職員 「第59次静教組事務職員部研究集会」

杉田雄佑
静教組事務員部長

7月14日(火)、第59次静教組事務職員部研究集会を「静岡県男女共同参画センターあざれあ」で開催しました。各単組・支部の事務職員、執行委員、静教組本部役員合わせて73人が参加しました。午前の全体会では、杉田雄祐 静教組事務職員部長が、2020年度の事務職員部の運動方針を説明し、政令市事務職員を巡る情勢について静清教組事務職員部・浜松教組事務職員部が報告しました。

その後、長谷川哲也さん(岐阜大学教育学部 准教授)が、「協働」の時代に求められる学校の姿と学校事務職員の役割について、以下の4項目について講演しました。

「協働」の時代に求められる学校の姿と学校事務職員の役割(抜粋)

岐阜大学教育学部
長谷川哲也 準教授

  1. 「協働」をキーワードにした教育改革
    「協働」をキーワードにした中央教育審議会答申からすれば、学校教育は、教員の「個(弧)業」ではなく、学校教育に携わる専門職や家庭・地域との「協業」が重要となる。そして、「協業」として成り立たせるためには、組織運営能力(=マネジメント力)の強化が不可欠である。
    学校事務職員には、「児童生徒への指導業務以外の業務への積極的関与」「学校経営への参画」が求められる。
  2. 雇用の未来はどうなるのか?
    マイケル・オズボーン「雇用の未来:コンピュータ化で仕事はなくなるのか?」では、生き残ると予想される仕事は管理的業務、自動化すると予想される仕事は事務的業務である。
    AI化が難しい仕事の特徴は、知覚や操作(器用さや正確さ、細かな作業、窮屈な場所での作業など)創造的知性(独創的なアイデアの創出、創造的な方法の開発、問題解決など)社会的知性(他者の反応への理解、意見をまとめて違いを克服する、心や行動を変えるように説得する、医療的な支援・感情的なサポート・パーソナルケアなど)である。
    学校教育に関連する仕事には、事務的業務と創造的知性や社会的知性を使うものが混在している。
  3. 学校事務職員の今日的役割
    • 方向性(1) 事務的業務の流れは、教員→学校事務職員→共同学校事務室というように、切り離しが可能で、効率化される。
    • 方向性(2) 学校事務職員が学校経営へ参画するにあたっては、従来の専門性に加え、組織運営に関する創造的知性や社会的知性が必要となる。
    • 方向性(3) 教員との協働は、決して事務的業務の切り離し・効率化だけではない。新たな時代に求められる教育実践とその改善のための「カリキュラム・マネジメント」も必要不可欠となる。
  4. パネルディスカッションの論点
    • (コロナ禍で見えてきた)新しい学校事務職員の役割とはどのようなものだろうか。
    • 学校事務職員の新たな役割を果たすためには、どのような「協働」の姿があるだろうか。

講演を踏まえて、長谷川哲也さん、岩本辰也さん(沼津支部・原小分会)、柴田直美さん(磐周支部・森小分会)の3人によるパネルディスカッション「学校事務職員が果たす役割の展望と課題」を行いました。

パネルディスカッション「学校事務職員が果たす役割の展望と課題」(抜粋)

学校事務職員は、専門職として知識と情報をもとに先を見通すことで、管理職や教職員に様々なアドバイスができる。今回のコロナウイルス感染症の対応では、子どもたちの安全と健康を守るために、消毒のためのアルコールや検温のための体温計など、様々な物品が必要になった。事前に「何が」「どれくらいの量」必要になるのか計算しておくことや、対応する人は「何人」「どれくらいの時間」必要になるか養護教員や担任と相談しながら想定しておいたため、教育委員会から調査が来た時に、円滑な対応ができた。

また、様々な人たちとコミュニケーションをとることも大事だ。人と人だけでなく、人と情報をつなぐことが、これからの学校事務職員には、求められる。

パネラー

柴田直美さん

岩本辰也さん

午後には、「事務職員の労働条件」「組織拡大・強化、事務職員の定数・賃金」「学校事務職員制度の確立」「今後の職務のあり方」の4分科会に分かれて協議をしました。分科会のテーマを中心に各単組・支部でのとりくみを紹介し合うとともに、日ごろ悩んでいることや問題を共有し交流を深めました。

静教組は、本集会の成果を今後の人事委員会や県教委・政令市教委要請行動等に生かしていきます。

<参加者の声>

  • 講演によって総論が語られ、その上でのディスカッションでしたので、理論と現場の思いがつながった気がした。
  • 事務職員部の組織拡大・強化は重要課題であり、その大切さを未加入者へ伝えていきたい。教育委員会との交渉において組織率の高さは説得力につながるので、組織拡大に力を入れていきたい。
  • 共同学校事務室は、各地区で工夫したとりくみを行っているが、学校と共有しきれていない部分がある。教員の理解と事務職員からの情報発信が上手に絡み合うとより効果がある。