第2063号2019年10月25日
国境を越えて、これからも交流を −オーストラリア教育組合ビクトリア支部との交流−

▲県教委表敬訪問の様子

 8月に静教組が訪問したオーストラリア教育組合(AEU)ビクトリア支部から、メレディス・ピース委員長を団長とするAEU組合員13人が来静しました。東部地区でのホームステイ、学校訪問、県教委表敬訪問、静教組との教育協議会等を行い、様々な形で交流を深めました。

=ホームステイで心と心の交流=

AEU組合員は9月26日(木)から29日(日)まで東部ブロックにてホームステイ(田方2人、東豆3人、三島1人、沼津3人、駿東2人、富士2人)をしました。新幹線の各駅で笑顔のホストファミリーと対面し、それぞれのホームステイ先に向かいました。

9月27日(金)には各地で学校訪問をし、授業参観や子どもたちとの交流を行いました。授業に参加して子どもたちにオーストラリアの紹介をしたり、オーストラリアでは習慣のない給食や清掃を一緒に経験したりと、日本の学校生活に触れ、充実した一日を過ごしました。

週末はホストファミリーと交流を深め、富士山が大きく見られる東部地区ならではの景色も楽しみました。最終日の見送りでは、互いに別れを惜しむ姿が見られ、充実したホームステイの様子を垣間見ることができました。

=STUとAEUとの教育協議会=

10月1日(月)に静岡県教育会館にて開催された教育協議会には、AEU組合員、静教組本部及び各単組・支部役員、静教組立教育研究所、県PTA連絡協議会、県校長会から、計45人が参加しました。

全体会では、静教組とAEUの双方から教育の現状と課題について基調提案を行いました。その後の分散会では、基調提案に加え学校訪問で参観したり体験したりしたことをもとに、授業づくり、生徒指導、特別支援教育、研修、教職員の多忙な勤務など、国は違っても共通に抱える課題について協議しました。互いの状況を知ることにより、よりよい教育環境や職場環境のあり方を見つめる視野が広がる機会となりました。そして、子どもたちの未来や教育に馳せる教職員の熱い想いは世界共通であるということを感じる機会でもありました。

オーストラリアの教育の実態

●ビクトリア州の教育制度

各州政府教育省が大学以外の教育機関制度を管轄している。ビクトリア州では、6歳から17歳までが義務教育年齢(小学校、中高校)と規定されている。1月〜12月を年度とし、4学期(ターム)制をとっている。1クラスの人数は多くても25人程度。20人ほどの少人数制で授業が行われている。

ビクトリア州の公立学校には、学校協議会(School Council)が設置されている。学校協議会は、保護者・校長・地域住民で構成され、ビクトリア州の法的枠組みの中で学校を運営・管理する役目を果たす。教職員は公務員ではなく、学校協議会が人事や予算執行の権限をもっている。

●AEU(オーストラリア教育組合)ビクトリア支部について

組合員は4万9千人。うち4万3千人が初等中等学校の教職員であり、校長も加入している。組合員は州全域の1500校を超える様々な規模の学校に勤務している。

●ビクトリア州の教育の現状と課題

ビクトリア州は文化的多様性が極めて高く、住民の出身地は200か国以上、150以上の異なる言語が話されている。公立の初等中等学校では、その多様性が尊重されている。学校は、地域の人が集まるコミュニティの中心的存在であり、地域の人々が学校運営に深く関わっている。ビクトリア州では人口増加率が2%を超え、2022年までに子どもが115,000人増えるため、学校を新たに100校造る予定になっている。一方で公立学校に十分な予算が与えられていないため、学習面や福祉面において課題が山積している。

また、全国統一の学力テストによる学校現場への圧力が高まっている。テストへのプレッシャーは子どもたちのストレスになり、教職員にとっても、結果が教員評価に使われるなど不当な評価が大きな負荷となっている。さらに、テスト対策の授業はカリキュラムへの支障を来し、学校、子どもたち、教職員に悪影響を及ぼしている。今年は、オンラインテストでの接続の不具合やシステムのクラッシュなど新たな課題も発生している。

教材研究や教員研修の時間が取れないといった教員の多忙、長時間労働も課題であり、AEUは教職員の勤務時間について教育省との交渉を重ねてきた。その中で、教員が授業以外のこと(授業研究、他校への授業参観など)に専念できる日を年4日間とることが認められた。

=歓迎レセプション=

教育協議会後は、歓迎レセプションを開催しました。レセプションには、教育協議会参加者に加え、県教委、教育事業団体の代表者、連合静岡 中西清文 会長、佐野愛子 県議会議員、沢田智文 県議会議員など多数の出席がありました。また、各テーブルの通訳を兼ねて組合員9人も出席しました。それぞれのテーブルでは、和やかな雰囲気の中、滞在時の思い出や互いの文化について語り合う姿が見られました。

会の最後にAEU代表者が日本語でスピーチをし、「日本の先生はよく働き、細かいところによく気が付くと思った。ホストファミリーの学校へ行って、もっといい先生になりたいと思った。とても素晴らしい経験ができた」と、今後の活躍につながる感想を述べました。