理由と目的を考える
島田市立六合中学校 3年 中野 日花

 「どんなことにも意味や目的がある。」目的が曖昧になってしまうとせっかくやっても意味がなくなってしまうことがあります。なぜもっと目的や理由を理解することを呼びかけないのだろうと思うことが日常にたくさんあります。「廊下は走らない」「ワイシャツの下には下着を着用する」などの決まりを破る人がいるのはなぜでしょう。それは決まりが存在する意味や目的を理解できていないからです。ワイシャツの下なんて見えないからどうでもよいという人がいますが、ワイシャツの素材は汗を吸わないから、下着を着ることで汗を吸収してくれるので身体が冷えることを防いでくれます。下着を着用することで衛生的で健康的な生活を送れる訳です。このような目的が理解できれば、下着を着用しようと思う人が増えて決まりを破ることが減るのではないでしょうか。
 私が物事の意味や目的を考えるようになったのは、小学生で分数と分数の割り算を習っていた時の出来事がきっかけです。
「割る方の分母と分子をひっくり返して、かけ算をすればいいのです。」
その先生の言葉に私の頭の中は疑問でいっぱいになりました。
「なんで分母と分子をひっくり返すのかな。」
気になって仕方がなくて、ちっとも問題なんて頭に入ってこなかった私は、勇気を出して先生に質問しました。先生ならきっと質問に答えてくれると思ったからです。半分わくわくしながら質問したら、意外な答えが返ってきました。
「いいからひっくり返すの。どんどん自分のやることをやりなさい。」
その時はどうして質問に答えてくれないのだろうと驚きむっとしたのを覚えています。時間がたつにつれてこれはおかしいのではないかと強く感じるようになってきたのです。確かに、分母と分子をひっくり返してかけ算をすれば正しい答えは導き出せます。でも、なぜひっくり返すのかという「なぜ」「何のために」を考えることが学問の楽しさではないでしょうか。それなのに、「黙ってやりなさい」とか「とにかくやりなさい」と言われたことが今までもたくさんありました。ただ暗記したことは忘れてしまいます。「なぜ」「何のために」を考えたり理解したりすることをもっと大切にすべきです。
 目的や理由を理解できると見えてくるものが違ってきます。先日の体育大会の目的も、どのクラスの足が速いとか、どのクラスの運動神経が一番よいのかとかを決めることではないと思います。体育大会の練習を通してクラスの絆を深めたり、団結力を強めたりすることに目的があるのです。そう考えたら、走るのが遅い私でもクラスのためにやれることがあるように思えました。結果は二位で残念ながら優勝することはできませんでした。けれどこの体育大会で協力することを通して、この体育大会の目標である「みんなで楽しむ」ということは達成できたと思います。これは良い順位を得ることよりも重要なことだと感じました。
 受験生になった今、受験勉強でもその目的と理由を考えることを大切にしています。あの出来事以来、数学では公式の意味を理解するようにしています。公式の目的や理屈がわからないと応用問題は解けません。社会の年号のように暗記しなくてはいけないこともありますが、出来事が起こった背景や理由と関連づけるとすっきりと頭に入ってくるように感じます。また、問題やテストを解いた後には必ず、なぜ答えが違うのか、どうしてこの答えになるのかを考えるようにしています。とても時間がかかることもあります。でも、間違えた理由がわからなければ、次にまた、同じ間違えをしてしまうことになります。テストの目的は自分がなぜ間違えたのかを理解し、克服することだと考えているからです。
 分数の割り算でなぜ分子と分母をひっくり返してかけるのか、その理由を今では理解できます。このときの出来事は、私に大切なことを考えるきっかけをくれました。しかし、目的や意味がすぐにわからないことも存在します。なぜ勉強をしなくてはならないのか、と友達はよく言います。今の時代はパソコンがあるから、漢字だって覚えなくてよいし、計算だってできなくてよいというのです。勉強する目的は、「目標としている高校に合格するため」、ということも一つかもしれないけれど、それが大切な目的ではない気がします。難しくて今の私には、すぐに答えが見つけられそうにありません。これからの人生でもそういうことはたくさんあると思います。でも、すぐに答えがでないからこそ、目的を考えることが面白いように思います。
 私は存在するものの全てに意味があると思っています。意味がないことなどありません。これからも、存在することの意味を考えることを大切にしていきたいです。

科学技術の進化は“なぜ?”の追究の成果だと言われます。学びの基本は、この“なぜ?”の追究であることを再確認させる体験が綴られ、説得力があります。また、心が疲れた時の言葉“どうでもいい”も、物事の背景を知れば冷静さを取り戻せることを教える作品でした。