ゲームと私
浜松市立佐藤小学校 6年 中村 柑南

 私たちにとって、ゲームは身近だ。テレビゲームやスマホのゲームなど、すぐに始められる。持ち運びできるゲーム機もある。ゲームは楽しい。時間があると、ゲームをする。
 しかし、ゲームは中々、やっかいな存在だ。やっているだけで、なぜか、悪いことをしている気になる。ゲームをしていると母にしかられることが多いからだ。しかられる理由は、いつも決まっている。時間が守れずやり続けてしまうからだ。そして、いっしょにやってる弟とケンカになるからだ。でもなぜかまた、やりたくなる。
 なぜだろう。なぜゲームをしたくなるのか真けんに考えてみた。
 まず、単じゅんに楽しいからだと考えた。しかし、本当に楽しいのか。正直、疑問だ。それほど楽しいと思えない時も多い。最中に弟とケンカになる時は、最低の気分だ。どうしても勝ちたくなり、ゲーム機が弟の味方をしているのではないかとさえ、思う時がある。私に勝って喜んでいる弟や、ゲームそのものがにくたらしい。ひどい自分になっている。
 一方、同じ遊びでも、体を使って、友達みんなとやる遊びの方がずっと、楽しい。いす取りゲームやハンカチ落としは、無条件に楽しい。みんな大盛り上がりだ。単じゅんな遊びなのに、みんなでふざけあって、ワイワイやる方が、高性能なテレビゲームよりはるかに楽しい。友達に負けてもいやな気持ちにはならない。不思議だ。
 理由の二つ目として、達成感があるからだと考えた。ゲームの中の敵をたおせば、確かにうれしい。今の敵をたおせば、次の新しい敵が登場する。そして、またたおす。一つ一つクリアして、最後までやりきったときの達成感のためにやっている。しかし、その達成感は長続きしない。結局、「敵に勝ったからなんなんだ」ということかもしれない。
 一方、同じ達成感でも、水泳の場合は違う。私は水泳の選手だ。毎日泳ぐ。苦しくても泳ぐ。単じゅんな練習のくり返しだけど泳ぐ。これは自己ベストを出したいからだ。入賞して賞状をもらいたいからだ。大きな大会の出場権を得たいからだ。達成した時のうれしさは、苦しさの分、はんぱない。本当に心から、喜べる。家に帰ってからもうれしさは続く。ねる時も、うれしさがこみ上げてくる。
 分かったことがある。ゲームのように、苦しさがない「努力」には、達成感はない。一方、苦しさがある努力の後には、大きな達成感がある。また、母も「がんばったね」とほめてくれる。ゲームを「全クリ」してもだれもほめてくれない。
 ゲームをしてしまう理由で、最後に思いつくのは、身近にあることだ。多分、大してやりたいと思っていないのに、ひまつぶしの感じで、ついついスマホに手がのびる。ごはんの前のちょっとした時間などだ。本当に心からやりたいと思っていないのに。
 父にこのことを相談した。父のアドバイスは、自分の好きなことを見つけてそれをやればいい、ということだった。私は工作が好きだ。ビーズの工作やとう芸などをやる時は、色々なアイデアが出てきて、それを形にする作業には、充実感がある。あと、本も好きだ。読み進めるとワクワクドキドキする感じがたまらない。マンガも好きだ。
 でも、工作にしても、読書にしても、まとまった時間がないとできない。どうしたらよいか。父は続けてアドバイスしてくれた。時間は作るしかないということだった。やるべきことをどんどんして、自分が自由にできる時間を作ろうと心がけないと作れないと教えてくれた。ごはんの前のちょっとした時間でも、できることはある。たとえ五分でも五分でできることはある。明日のしたくは、五分でできる。おふろそうじのお手伝いも五分でいける。十五分余っていれば、日課にしているストレッチができる。小さなすき間時間をムダにゲームに使うのではなく、ねる前に、作れた一時間で自分が好きなことを存分にできる方がずっとすばらしいと思った。
 今回、考えた結果、今後は、ゲームとうまく付き合えそうな気がしている。色々考えたが、やはりゲームをやりたい時もある。特に、すごろくゲームなどのボードゲームがテレビゲームになっているようなものだ。家族でワイワイやりながら過ごすのは楽しい。本当にやりたいゲームなら、父の言うように、時間をしっかり作ってやればいいと思う。
 でも、ムダにゲームをすることはなくせると思う。特別楽しいわけでもなく、達成感もないゲームを、身近にあるからといって、なんとなくやることほど、時間のムダはない。「ゲームは楽しいもの」という考え方が、必ずしも、正しくないことに気づいた。それと同時に、不思議と、これからの生活に前向きな気持ちになれている自分にも気づいた。

柑南さんは、なぜゲームをしたくなるのかを真剣に考えています。理由を見つけた後もさらにどうしてなのかを考えています。深く考えて自分なりの答えを見つけているので、読む人もどんどん文章に引きこまれていきます。ゲームを通して、時間の使い方や自分の生き方にまで考えを深めていくところが見事です。