挑戦は未来を拓く
学校組合立牧之原小学校 5年 高畑 恋那

「じゃあ、次はエールいくよ。せーの。」
応援団長の合図で、音楽室全体をゆらすような赤組八十人の声が固まりになって、前にならんだ私の体にぶつかってくる。私は押し倒されないように両足を踏ん張って、おなかから声を振りしぼる。
(よし、いいぞ。みんな、きのうよりもずっと大きい声が出ている。)
 私たち応援団員の思いが伝わった手応えを感じて、胸がぐぐっと熱くなった。それとともに、
(私にも、こんな声が出せるんだ。思い切って応援団に挑戦してよかった。)
と、これまで経験したことのない世界に踏み込んだ興奮に包まれていた。
 それまでの私は、正直言っていろいろなチャレンジに背を向けていた。初めて経験することや、やったことのない役割に対して、
(めんどうくさいな、はずかしい、うまくいかなかったらどうしよう。)
 そんな気持ちがわいてきて、手をあげようかどうか迷っているうちに他のだれかが引き受けてくれた。立こうほする人がいなくて、くじ引きやじゃんけんで決めることになっても、当たらないことばかり願って、役につかなかったことにほっとする自分がいた。
 五年生になった今年は、これまでにないくらいたくさん挑戦する機会がやってくるようになった。それに次々に手をあげて意思を示す友達を横目で見ながら、
(五年生だし、私も何かやらないといけないかな。)
とのんびりかまえていた。ところが、担任の先生が“リーダーは選挙で決める。”とおっしゃったあたりから雲行きがあやしくなり、あれよあれよという間に、何と得票数第二位の私は、班長を飛び越えて学級委員まで務めることになってしまった。
(どうしよう…。どうしよう…。)
大きくふくらんでいく不安につぶされそうだった私に、
「恋那ちゃんならやれるよ。いっしょにがんばろうね。」
と、もう一人の学級委員Cさんが声をかけてくれた。その時、心の片すみに、小さな芽がぴょこんと顔を出したような不思議な感じがした。そして、その芽は温かい日光のような友達パワーのおかげで、かれることなく順調に育っていった。
 放課後練習にはりきって取り組む「交通安全自転車大会」の選手たちの真剣な顔つき。「陸上大会出場選手をはげます会」で下級生を率いて全力でエールを贈った二人のRさん。気づいている人は少ないけれど、牛乳パックのリサイクルケースを自主的にきれいにしてくれているAさん。私の周りでどんどん新しい世界に挑戦し、どんどん新しい自分になっている人たちがいた。
 私も負けないように、学級委員として、みんなの仲がいっそうよくなるにはどうしたらいいか考えた。そして週一回、給食の時の座席をいろいろな形に変えることを提案した。本当の席替えは3ヶ月に一度だけれど、一日だけの「ちょこっと席替え」はひょう判がよく、苦労して六通りものパターンを考えてよかったと大満足だった。
 そんなある日、運動会の応援団募集の連絡があった。私はすぐ先生に、
「学級委員が応援団員をかねても大丈夫ですか?」とたずねた。その一言がきっかけで、応援団として、みんなの大歓声を受け止めて、胸を熱くする私の未来が動き出した。
 みんなの声が小さくて落ち込んだ一回目の練習後には、応援団全員で大声を出し合う特訓をした、動きのタイミングが合わない時は、お互いに見合って、学年関係なく修正ポイントを言い合った。
(めんどくさいな、はずかしい、うまくいかなかったらどうしよう。)
そうやって逃げ回っていた自分はもういなかった。私は新しい未来をつかんだのだ。
 挑戦というと、独りぼっちで不安に耐えながら戦い抜くというイメージが強いかもしれない。でも必ずしもそうではないことがわかった。目標が近そうな誰かを見つけて、手をつないで、声をかけ合いながら少しずつ進んでいくのもいい。疲れてきた時はひと休みして、仲間の活やくを見守ったり、お互いのがんばりに拍手を贈り合ったりすることも大切だ。そして、その喜びをエネルギーにして、また次の一歩を踏み出せばいい。
 私はこれからもいくつもの挑戦を続けていこうと思う。五年後、十年後のすてきな未来、かっこいい自分を信じて。

今までに経験したことのない世界。恋那さんにとってそれは、自ら挑戦する姿勢で生活することだったのですね。心の片隅に生まれた挑戦パワーの成長が、臨場感あふれる表現となっていたところが、素敵でした。新しい自分に出会う楽しさを知った恋那さんのこれからの成長が楽しみです。